【映画】「シン・ゴジラ」 常識人へのアンチテーゼ。ゴジラは豊かさの代償。

【映画】「シン・ゴジラ」 常識人へのアンチテーゼ。ゴジラは豊かさの代償。
『シン・ゴジラ』予告

約2時間の映画を観にいくって、かなりエネルギーを使いますね。観だすと気にならないですけど、どうも映画館に行くまでが面倒くさいです。きっと歳のせいなんだろうなぁ…。

しかし、映画「シン・ゴジラ」はネットでも口コミが凄いし公開初日から2日連続で観たという知り合いなんかもいて、そんなに凄いのかと、とても気になっていた作品。「マッドマックス 怒りのデス・ロード」以来の映画鑑賞に行ってまいりました。座席もほぼ埋まっており、かなりの盛況っぷりで老若男女いる感じ。

ちなみに私は、過去のゴジラシリーズを全く観たことがありません。なので、過去作との比較ということは出来ませんが、逆に先入観なくストレートに作品を観ることが出来たかなと思います。

ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ [ 庵野秀明 ]

価格:10,584円
(2016/9/4 16:29時点)


以下映画ゴジラの感想です。
(ネタバレ有り)
まだ本編を観てない方はお気をつけ下さい。

















そこにいるようなリアルさ。危機感がある。

一番感じたことは、とにかくリアルさを感じられる映画だなと思いました。ゴジラが誕生した経緯、有事の際の日本政府の対応など、ストーリーとしてのリアルさ。そして、ゴジラが街中を歩くときの映像表現は、人間目線で丁寧に描かれており、すぐ近くにゴジラが居る!というリアルさがありました。特に東京にお住まいの方は、よりリアルに感じられたかと思います。

あんな状況になったら、自分だったらどうするかと想像せざるをえないぐらいの危機感を感じられるのではないかと思います。

表現に関して

まず言いたくなるのは、これは実写版エヴァンゲリオン。作戦会議の音楽は、もろそのまんまだし、劇中のテロップもエヴァのマティスフォントで全く同じ。庵野監督の遊びゴコロ満載です。ゴジラ=使徒みたいなもんですからね。

また、ゴジラ登場のシーンはやはり震災を彷彿とさせます。このあたりはなんとも言い難いのですが、鑑賞者に有事のリアルさをより感じさせる部分ではありますね。

そして、クライマックスシーンの無人在来線爆弾は、思わず吹き出しました。このあたりはリアルさからはちょっとかけ離れちゃうんですが、サービス精神に溢れているなと感じました。こんなエンタメ要素があるから作品に厚みが出ますよね。監督は本当に特撮がお好きなんでしょう。

メッセージ性

各所にメッセージ性を感じられました。最も強く感じたものひとつとして、未曾有の危機に直面した際、常識人はあまり出る幕がないということ。ゴジラが登場した際、政府は生物学などの有識者に相談をするのですがちゃんと調べないとわからないなどと、何かにつけて言い訳をし、何の役にも立ちませんでした。

そして、各業界の鼻つまみ者、異端者など、人に媚を売らず己の腕のみで勝負するような人たちが集まることになり、未知の生物ゴジラを嬉々として解析していきました。

これらに見られるように、人におかしいと思われても自分の道を突き進む人と、そうでない人の対比が全編を通じて感じられました。現実世界では、いわゆる常識人の声が一般的には大きくて、立場が強かったりすることがしばしば多いものですが、そのような方々は有事の際、何も道を切り開くことは出来ない。自分で何かを考えることが出来る人と、周りに合わせることを第一に考え特に自分の考えがない人の差が如実に表れていたでしょうか。

このようないわゆる常識人たちに対するアンチテーゼをとても感じました。それが、作中のキーワードとして出てくる”自分の好きにする”ということに繋がっているのだと思います。

あとは、アメリカに対する日本政府のアンチテーゼですかね。これも上述の内容に近い部分もあるのですが、いいなりになってないで”日本の好きにしたらいいじゃん”という感じでしょうか。

ゴジラに関して

今回観て思ったのは、ゴジラは便利で快適な環境を作り上げた現代社会から生まれた副産物なんだと思いました。いわゆる原発に代表する”豊かさ”の代償。物事で、全てが自分の都合通りにうまくいくということはまずありえません。豊かさの裏には、なにか負のベクトルが働くはずです。それが形になったものがゴジラという存在なんでしょう。

登場したゴジラを見ていると、特に人間たちを攻撃をするわけではありませんでした。人間が攻撃するからそれに対して反応しているだけで、ただ歩いているだけです。(人間からしたら破壊行為ですが。)

しかし、人間達は日常を壊すゴジラという生物を仕留めにかかります。自業自得にも関わらず。これは、臭いものにフタをすような愚かな行為であるように思えました。しかしながら結果的に人間は勝ち、便利で快適な社会が守られたのです。こうして人間は、原発も克服してさらなる社会発展を遂げていくのでしょう。

これも人間が好きにしたことなんでしょうか…。この部分はとても考えさせられました。でも現実、今さら生活の質を落とせと言われても困るよなぁ…。とか。

最後に

本当はもっとラストシーンの考察など多々語る部分はあるとは思いますが、まだ一回しか観ていないので、あまり語れず…。DVDが出たら、もう一度観てみようかなぁ。

しかし、庵野監督は本当に凄いですね。敢えてわからない部分を残しているのが、とてもいいです。「あれどういうこと~!?」みたいな口コミがネットに蔓延しています。ネットをバズらせるテクニックは天下一品ですよね。

宣伝も、エヴァと同じで事前情報をほとんどシャットアウトしてましたね。情報飢餓感を煽っていたからこそ、公開後に爆発的に口コミが広がるのでしょう。知名度があるコンテンツだからこそ、なせる技ですね。私もまんまと引っかかってしまい、1年ぶりの映画館での映画鑑賞でした。

そして、シン・ゴジラの”シン”とは果たして一体なんだったのか!?新?、真?、神?答えは…、自分の好きな解釈でいいのではないでしょうか。ちょっとお粗末過ぎるかな…。

△ドンタコス

ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ [ 庵野秀明 ]

価格:10,584円
(2016/9/4 16:29時点)

映画「シン・ゴジラ」公式サイト
http://www.shin-godzilla.jp/

「シン・ゴジラ」 2016年7月29日公開 総監督:庵野秀明、監督:樋口真嗣